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■登録日 2019年1月4日  


「主婦」の力で働き方改革に挑む 長良通商・水谷幸子氏

▲長良通商の水谷幸子氏

 日本機械土工協会(日機協、向井敏雄会長)の会員の中に、女性が経営の舵を取り、わずか数年のうちに急成長を遂げた企業がある。長良通商(三重県)がそれだ。理想と現実の乖離(かいり)にも臆することなく、他の建設事業者と同様、顕在化した担い手確保・育成や、女性の活躍の推進をはじめとしたダイバーシティ(多様な人材の活用)に取り組み、機械土工工事を巡る「時代の要請」に応えようと奮闘する水谷幸子常務取締役に、そのモチベーションの在りかと、経営課題に対する認識、さらに2019年の経営方針を聞いた。

 ―機械土木施工の世界に飛び込んだきっかけは何だったのでしょうか?

 知人に『(長良通商という建設会社が)事務員を探しているよ』と声を掛けられたことが、全ての始まりだと言えなくもありません。当時、私はスーパーでお手伝い程度に働く普通の主婦だったのですが、子どもが手を離れていたこともあって、『まあ、なるようにしかならないだろう』という気持ちで、引き受けることにしたのです。それが2011年8月のことです」
 「ところが、勤め始めてみると、驚くほどに何もない会社でした。会社にはオーナーの他には年上の女性社員しかおらず、必然的に私が労務管理の一切を担わざるを得ない状況に陥りました。もちろん、給料一つをとっても、それまではいただく立場ではあっても、支払う立場になったことはないのですから。何もかも全てが手探りでした。何か問題にぶつかる度にグループ会社や労働基準監督署に尋ねたりしながら、一から学んでいきました」
 「営業上の社外折衝、交渉も1人でこなすしかありません。そうこうしているうちに、だれ言うとなく『肩書がないと仕事がしづらいでしょ』ということになり、私は総務部長になったのです。笑い話のようですが、はっきり言ってつらかったです、毎日が。でも私が辞めてしまうと、誰も給与を支払う人がいなくなってしまう―。あの頃は、とにかく我慢の日々が続きました。自分でもよく堪えることができたなあ、と思いますが、その堪える力こそが主婦力だと思います。主婦には先を読む力があるのです。機転も利きます。意識するまでもなく、思考と行動でマネジメントを実践しているのです」

 ―女性に活躍してもらうために、どのような点に気を付けていますか。

 「私は自分が経験してきたから、いかに女が外で、責任を持って働くことが大変なのか、ということが痛いほど分かっています。女性は常に家族のことを気にしていなければなりません。女性は家族経営をしながら子育てもしています。独身女性の社員もいずれ結婚して出産し、育児をします。男性はこれらの事を奥さんに任せて仕事一本に打ち込むことができますが、女性は男性のような訳にはいかないのです」
 「女性にはそれぞれの家庭環境に合った業務態勢で働いてもらっています。家庭の事情に影響されない人には営業や渉外などを任せ、手を離せない子どもさんがいる人や、人との折衝が得意でない人などには、それぞれの個性、得手、不得手をよくみて業務を分担しています。ただ、こうした柔軟な体制が取れるのは経営者の理解とチームワークがあればこそ。私自身を振り返ってみても職場の仲間の理解と、迷惑を掛けていてもいつも快く仕事に送り出してくれる義母と夫の存在を抜きにしては、生き生きと働くことはできていないだろうと思いますし、心から家族には感謝しています」
 
 ―担い手を確保するにはダイバーシティ(多様な人材の活用)の視点も欠かせません。

 「建設業という仕事に男、女は関係なく、『出会い』さえあれば関心をもってもらえる仕事ではないでしょうか。出会いの時を待つのでなく、その場をもっと建設業側が用意していく必要があると思います。弊社のように歴史の浅い企業が、多様かつ優秀な人材を得ようと思えば、人を育てるしか方法はありません。採用した人の意欲、得手、不得手をみて、適材適所の人事配置を熟慮するだけではなく、むしろ、配置してからこまめに気に掛けること、社員一人一人をしっかり見て、フォローアップしていくことが大切です。問題が発生した際には、その対応や改善を担当役員や部課長たちだけに任せることはしません。会社全体のこととして問題を把握し、解決・改善に努めるようにしています」

 ―「働き方改革」は中小企業にとっても待ったなし、の重い経営課題になっています。

 「当社は急速に成長した会社です。社員一人一人が人の2倍、3倍と働かなければできなかったことでもあります。私は入社してから5年ぐらいの間は、それこそ眠る間を惜しんで働き続けました。でも、ある女性事務員の雇用を通じて、こういう働き方は経営にとってマイナスだと思ったのです。残業もほどほどにして、休みが確実に取れる会社に変えていかないと、どんどん、どんどん人が離れていってしまうということに、気がついたのです」
 「この2年ほどの間に日曜出勤や、夜7、8時までの残業はなくなりました。確かに三六協定の範囲で働くことができれば、労働者はほぼ納得することでしょう。しかし、現実は大きく異なります。現場は遠く、朝は早くから出発しなければいけない、天気にも左右されやすく、急に休みになったり、日曜日を返上して仕事しなくてはいけなくなったりする…。労働者からすれば『賃金がきちんと支払われるのか』、会社側からすると『賃金をきちんと支払えるのか』―という心配が尽きません」

 ―建設業界の主だった事業主団体は、4週8休を目指しています。

 「現在は土曜日も現場を動かせています。現場が動くと、本社の管理部門の社員も数人は出社することになります。運転手が運転中の時間や、オペレーターが操作中の連絡は控えていますから、昼休み時間、もしくは17時以降に連絡するしかない、だから事務所の社員も残業せざるを得ない、というのが実情です。もちろん、連絡だけではありません。岩手の現場から秋田の現場に、沖縄の現場から千葉の現場に人と建設機械を移動させる、人の手配をするといった仕事をこなすのは17時以降の時間帯でなければできないのです。現場を動かすためには、本社をはじめとした周辺組織のサポートが欠かせません。『上限拘束』などと言っていたら、現場が動けなくなってしまいますし、そもそも、働きたい、稼ぎたい人もいるのですから」

 ―働き方改革を進めていくためにも、人材確保・育成は不可欠です。

 「すべての部署で人材が不足しています。必要な資格が足りなければ取りに行けばよいのですが、その時間がありません。女性運転手や技能実習生は即戦力にはなりにくく、現場に配置することができません。元請け会社は現場任せ、下請け任せにしないで、人材育成の専門部署を創り、気長に取り組まないと人づくりはできないと思います。発注者である行政機関にも必要経費を別枠で支払われるようにしてもらいたいですね」
 「現行の労働者派遣法ではオペレーターや作業員の派遣・出向は禁止されていますが、女性の活躍の推進をうたうのであれば、運用を柔軟にすることはできないものでしょうか。広域的な仕事に従事できない女性でも、地元や近隣の市町村であれば働ける、働きたいという人はいると思いますし、オペレーターや運転手不足で困っている地域の建設業者もありますから」
 「理想と現実の隔たりは余りにも大きい、ということを立法府と行政府の人たちには知ってほしいと思います。私たちの取り組みは、まだ道半ばですし、明確な答えやゴールが見つかるような状況にはありません。今年も試行錯誤していくしかないかな、というのが率直な思いです」(脇坂章博)

<長良通商>
▽代表取締役=坂野孝子
▽本社=三重県桑名市大字下深谷部745番地1
▽事業所=福島・釜石・宮古・奄美・沖縄
▽設立=2006年12月7日
▽従業員数=320人
▽資本金=3000万円
▽登録許可=一般建設業、一般貨物自動車運送事業、古物商、産業廃棄物収集運搬業(三重・愛知・岐阜・岩手・宮城・福島・奈良)、労働者派遣事業許可

【おわり】


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