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■登録日 2019年1月4日  


老朽化するマンションストック

▲解体前の四谷コーポラス▲建て替え後の四谷コーポラス▲築後30~50年超マンション戸数

 老朽化したマンションをどうするか。

 丁寧な維持修繕を重ねてヴィンテージマンションとして住み継がれていくマンションがあれば、再開発事業で除却され新しいマンションに生まれ変わるものもある。今回、現在地での建て替えを選んだマンションを中心に、その経緯を取材した。なぜ建て替えなのか。費用は。従前の居住者は建て替え後も残ったのか。

■建て替え完了は全国で237件

 237件、1万9000戸―。これは、国土交通省が調査した2018年4月1日現在での全国のマンション建替え工事完了実績だ。
 マンションストック総数は約644万戸とされる中、この数は大変少ない。では、建て替えを実施したマンションはどのような経緯で実現したのか。
 まず、旭化成不動産レジデンスが手掛ける日本最初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」の建て替え事例を見る。

■東京都心・小規模マンションの建て替え

 JRと東京メトロが乗り入れる四ツ谷駅から徒歩約5分、外堀通りを1本入った住宅街に、日本で初めて民間企業が分譲したマンションとされる「四谷コーポラス」があった。現地ではすでに解体工事が完了し、2018年11月時点で新築の型枠工事が進む。同マンションは1956年完成、日本で初めて民間企業が分譲したマンションとされている。
 
《住民一人一人の不安に寄り添う》
 
 「四谷コーポラス」の再生に向けた検討が本格的に始まったのは2006年のこと。給排水管の老朽化が課題となっていた。さらに、東日本大震災を機に13年に耐震診断を実施して耐震性への不安が顕在化したことで、検討が加速した。
 議論を具体化するため、再生検討委員会は建て替え顧問として「四谷コーポラス」販売当時の売り主だった信販コーポラスの元社員・川上龍雄氏を招いた。川上氏はコンサルタント業務を担い、居住者がそれぞれに抱える課題や不安をヒアリングし、ていねいに向き合うことで、改修やリニューアルではなく建て替えへと、方向性をまとめていった。
 16年11月に事業協力者に旭化成不動産レジデンス(新宿区)を選定。約5カ月後の17年3月に建て替え決議が成立した後、同年5月に全員合意した。19年7月の完成を目指して建て替え工事が進んでいる。
 
《コミュニティーの強さで早期の合意形成へ》
 
 建て替えの事業手法は、等価交換方式を採用した。区分所有者24人のうち、70代が最も多く、次いで80代、60代という内訳だ。分譲当時の購入者が長く所有し、転売することなく相続されて親子に渡って住み継がれてきたケースが半数以上。住民同士の円滑なコミュニティーが続いており、昔からつながる住民同士の関係も健在で管理組合総会への出席率が高いことなどが全員合意に至った大きな要因だといえる。
 旭化成不動産レジデンスは個別面談を中心に住戸プランや財務、引っ越しの相談など問題解決を進めた。高齢者には提出書類の書き方や仮住まい内覧への同行などを専任でサポートした。
 
《従前のレガシーを受け継いで再生》
 
 従前の「四谷コーポラス」の間取りは76平方㍍のメゾネットタイプがメイン。オーダーメード設計を採り入れ、洋風と和風それぞれの住戸があり、家具のレイアウトなども住民の希望に沿ったものとした。
 ソフト面でも、大学教授や社長、弁護士、医師など高所得者をターゲットとした当時の高水準のサービスを提供。各住戸の台所や共用廊下にはダストシュートを設置。入り口には管理人室があり、外出時の鍵の預かりやごみ集め、クリーニングの取り次ぎなど、今でいう〝コンシェルジュサービス〟の原型のような管理もなされていたようだ。
 このようなレガシーを反映し、区分所有者の再取得住戸は、ここでも個々の要望に合わせたオーダーメード設計とした。総戸数51戸に対し、33パターンのプランを用意する。
 駅から近い利便性もあり、これからも四谷に住み続けたいと希望する住民が多く、区分所有者の9割が再建後のマンションを再取得する予定だという。

■マンション建替推進協会に聞く、建て替えの実際

 次に、『マンション建替士』を育成し、建て替えに向けた支援活動を行う一般社団法人マンション建替推進協会(本部・横浜市)の塚越隆行代表理事に話を聞いた。

《減築も選択肢》

 ―マンション管理組合はどのような場合に建て替えを選ぶのか。
 「まず、耐震強度が不足している建物の場合、安全対策として建て替えを選ぶことが多い。耐震補強の工事費と建て替え費用を比較し、建て替えを選び決議している」
 「次が老朽化。天井が低い、エレベーターがないなど、建物の陳腐化が要因となっているケースだろう」
 ―建て替え費用の目安は。
 「1戸当たり1500万~2000万円を見込む。新築物件を購入するより安く済むが、例えば年金生活に移行した居住者にとっては、やすやすと乗れる話ではない。銀行のリバースモーゲージや住宅金融支援機構のまちづくり融資制度を活用するなど、資金計画をしっかり検討する必要がある」
 ―空き室が多いマンションでは管理費や修繕積立金が不足し、長期修繕計画が行き詰まる。
 「敷地や容積率に余裕があれば、建て替えで建物の容積を増やし、保留床を処分して費用をねん出できる。その場合、居住者は少ない資金負担で済むため、建て替えを選択しやすい」
 ―それでは、現在容積率いっぱいに建築してあるマンションは建て替えができないのか。
 「デベロッパーが事業協力者として参加しないので、補助金や融資を活用した自主建て替えを検討する。一方で〝減築〟することも可能になると考える。戸数を減らして余剰地を生み出せば、そこを利活用して費用を工面できる」
 ―建て替えた場合、従前の居住者が新しいマンションに〝戻り入居〟する割合は。
 「立地にもよるが、再入居率は70~90%程度ではないか。権利変換で従前面積を100%還元できるケースが減っている。その結果、住まいが狭くなるのを嫌って転出するか、資産形成として保有し賃貸に出す居住者が増えている印象だ」

《小規模物件も建て替え可能》

 東京都によると、2003年以降、都内でマンションの建替えの円滑化等に関する法律により建て替えたマンション事例は53件(別表①、未着工を含む)。このうちデベロッパーは参画せず管理組合が自力で建て替えたマンションは3件のみ。いずれも建て替え後の住戸数は0~1割程度しか増えておらず、デベロッパーにとって〝うまみ〟が多いとは言えない。
 塚越代表理事は「戸数を増やせなくても、諦めずに建て替えを検討してほしい。当協会では、そのような小規模物件を全力で支援していきたい」と話す。

■老朽化マンション対策はコミュニティー活性化対策

 国土交通省によると、2017年末現在で築30年を超えるマンション戸数は112・0万戸、築40年超は67・6万戸、築50年超は5・3万戸。
 これが10年後の27年になると、30年超が167万戸、40年超が112万戸、50年超が72・9万戸に拡大する。
 マンションの老朽化は毎年進む。今から技術的な対策や管理組合支援策の検討を始めても、決して早すぎることはない。
 いざ検討の時が来たら協力して議論ができる土台として、良好なコミュニティーを形成しておくことが重要だ。
 これは、将来の建て替え対策だけでなく、日常の維持管理や災害時の対策にも通じる。
 マンションを考えることは、その土地のまちづくりを考えること。この基本を居住者とデベロッパーの双方が共有することが、マンションの老朽化対策の最初の一歩になるはずだ。


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