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■登録日 2019年1月4日  


これからのインフラツーリズム 「感動」のある旅を創る

▲首都圏外郭放水路(地下神殿)▲外郭放水路の見学会の模様▲地域のイベントと連携

 「地下神殿」の異名で知られる首都圏外郭放水路(調圧水槽)の見学者が急増している。施設を管理する国土交通省江戸川河川事務所などで構成する協議会は2018年、民間事業者と協定を結び、この「地下神殿」を核として、従来の施設見学の枠を超えた地域観光の取り組みを展開した。

〈地域活性化の核に 見学会から観光へ転換〉

 国交省によるこのチャレンジングな取り組みは、「防災に対する意識啓発」を掲げた見学会から脱却し、インバウンド需要の取り込みや地域活性化も見据えた観光を目指すべきだとした首都圏外郭放水路利活用懇談会(座長・篠原靖跡見学園女子大学准教授)の提言に応えたもの。地元の埼玉県春日部市や春日部商工会議所などの参画を得て協議会を設立し、見学会の開催に向けて東武トップツアーズを連携相手に選定。外郭放水路の観光資源としてのポテンシャルに注目し、地域の活性化に取り組んできた。
 民間運営の目玉の一つは、土日・祝日にも見学会を実施できるようにしたこと。入場者枠をそれまでの5倍に増やし、月1万人の受け入れを可能にした。また、従来は見学できなかった第1立坑を観覧コースに追加。現実には見ることができない洪水時の調圧水槽を仮想現実(AR)で体験できるスマートフォンアプリの開発や、施設の意義・役割を伝える「地下神殿コンシェルジュ」の採用、海外観光客の来場に備えた多言語対応アプリの導入など、「プレミアム」なサービス内容の充実を図った。こうした取り組みが功を奏し、開始後3カ月でそれまでの年間来場者数に匹敵する2万2162人の見学者を集めるなど、大きな成果につながりつつある。
 外郭放水路に集まったにぎわいの、地域への環流にも取り組む。18年11月17日の特別見学会は、地元市民団体による「彩龍の川まつり」や、江戸川・利根川流域の名産品を紹介する「江戸川カッパ市」と同時に開催し、地域の魅力の発信に一役買った。

〈地域・民間と一体で 魅力づくりへの「覚悟」〉

 「インフラツーリズム」という言葉が、政府の観光立国実現に向けたアクション・プログラムの中に位置付けられてから5年。灯台や港湾クルーズを除くインフラ施設の見学者は17年度に年間50万人となった。国交省は18年11月、来訪者数を20年度に100万人へと倍増させる目標を打ち出している。
 インフラツーリズムの普及拡大に向け、国交省は18年に有識者懇談会を新設。11月に開かれた初回の会合では、これまでの取り組みで明らかになった課題として▽施設の見せ方▽地域との連携▽対応要員の確保▽受け入れ環境の整備―などが提起された。
 外郭放水路での取り組みは、こうした課題の克服に向けた新たなチャレンジだ。「地下神殿」の見せ方をさらに改善するとともに、地域を巻き込んだ観光へといかにつなげるか。成果の一つは、旅行会社による企画旅行を受け入れ、外郭放水路だけでなく周辺地域を巡るツアーが形成されたこと。放水路の見学者の64%が、見学後に春日部市域での食事や観光を予定しているとのアンケート結果も出ている。
 国交省関東地方整備局の佐藤寿延河川部長は、施設管理者と地域、民間事業者が相互に連携し、長期的に持続可能な仕組みを作る必要性を強調。そのためには「地域の観光資源を掘り起こし、外郭放水路とともに観光コースを生み出せるか、魅力づくりへの覚悟が問われる」と指摘する。
 篠原准教授は「観光資源は最初から『ある』ものではない」と指摘する。大手旅行会社で30年にわたりツアー開発に携わった同氏は、顧客にとっての魅力を発掘し、「今だけ、ここだけ、あなただけ」の感動という付加価値を生み出すこと、言い方を換えれば「旅を創る」ことの重要性を説く。
 外郭放水路では、18年末までの見学会の実践結果を踏まえ、ブラシアップした新たな見学サービスを今春、開始する。外郭放水路を核に、どのように旅を創り、地域振興とインフラを結節させるのか。「地下神殿」での挑戦は、インフラツーリズムの今後を占うものになりそうだ。


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