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■登録日 2018年1月4日  


建設業・技術者養成の最前線 芝浦工大と日大の取組

▲堀越英嗣氏▲関文夫氏

 来春卒業予定の大学生、内定辞退率が過去最高の64.6%―。昨年11月、企業の採用担当者にとって衝撃的ともいえるニュースが話題となった。人手不足により、学生には売り手市場で就職先の選択肢が拡大する反面、企業側、とりわけ中小の新卒採用が一段と厳しくなることが予想される。こうした問題は建設業の人材確保策にも暗い影を落としている。一方で、将来の担い手を育てる教育の現場では今、どのような課題に直面しているのか。優秀な人材を数多く育て、送り出してきた「最前線」から見えてきたものとは―。芝浦工業大学建築学部長の堀越英嗣氏と日本大学理工学部土木工学科教授の関文夫氏に、両大学の取り組みを聞いた。

●芝浦工業大学建築学部長・堀越英嗣(ほりこし・ひでつぐ)氏、1976年東京芸術大学美術学部建築学科卒。78年丹下健三・都市・建築設計研究所、主な担当として東京都庁舎競技設計(最優秀案)、赤坂プリンスホテルなど。2004年芝浦工業大学教授

<学部・学科の再編で「世界で活躍できる技術者」を養成>

■従来の教育課程を再編し、新たに建築学部建築学科がスタートしてもうすぐ1年。こうした改革を断行した背景を教えて下さい。

 堀越 昨年、本学は創立90周年を迎えました。前身である東京高等工商を創設した有元史郎の理念でもあった「社会に役立つ技術者の養成」という建学の精神は今も脈々と引き継がれています。しかし、時代の要請もめまぐるしく変わるような現代では、技術者が備えるべきものも創立当時とは大きく変化しています。とりわけ、SGU(スーパー・グローバル大学)として国の認定を受けているわれわれとしては、「世界で活躍できる技術者の育成」に力を注ぐことが重要になると考えています。32人という豊富な教授陣を誇り、建築を志す多くの学生がいる状況は、大学のリソースとして貴重です。それまであった複数の学科を一つにして、より多様な分野に対応できる体制に組み直そうということになり、新学部・学科の設立に至ったわけです。

■どのような教育カリキュラムを組んでいるのですか。

 堀越 建築学科は、身近な空間や住宅・建築などのスケールに重心を置き、幅広い領域を学ぶSA(空間・建築デザイン)コース、都市やまちづくりなどのスケールに重心を置いて幅広い建築技術を融合するUA(建築・都市デザイン)コース、災害復興や地域再生、エネルギー・環境問題などの先進的なプロジェクトを通じて建築や都市・空間をデザインするSA(先進的プロジェクトデザイン)コースで構成しています。1学年は約240人ですが、多様な学び方を提供することで建築に関わる学生の可能性を広げていこうという考えです。

<多様性の視点で発想する技術者育て、「一貫教育」も視野>

■海外や国内でも学生の交流が活発だと聞いています。

 堀越 20年来の取り組みとして仏・パリの名門、ベルビル建築大学との交流が続いています。また、ロシアやイタリアの工学系大学とも、互いの学生が行き来するような関係を構築してきました。近年、キャンパスもかなり国際色豊かになり、留学生の数は延べ1000人を超えました。また、国内では「空き家改修プロジェクト」や次世代型ゼロ・エネルギーハウスの建築コンペ、「エネマネハウス」への参加など、学生が主体となって行動する取り組みが盛んです。

■今後、建築を志す学生はどうあるべきだとお考えですか。また、大学としてはどのような視点で建築系技術者の養成に取り組んでいくのでしょうか。

 堀越 今まで、建築分野は「作り手」が発信する時代が続きました。しかしこれからは「使い手」の要請にどう応えていくかが問われるようになります。つまり、建築にも社会性が求められる時代です。ダイバーシティの考え方が根付き、海外の人や女性の視点で建築を捉えることが当たり前になってきます。多様性という観点からものづくりを考えられる発想力を備えた技術者を育てていきたいと思います。
 また、決して拙速に進めてはいけませんが、将来は大学院も含む「6年間一貫教育」も視野に入れた教育改革にも取り組んでいくつもりです。

●日本大学理工学部土木工学科教授・関文夫(せき・ふみお)氏、1985年日本大学理工学部卒後、大成建設入社。橋梁の設計・施工を担当した後、土木デザインを独学で習得。環境と構造を融合した土木デザインで国内外の作品が数々の賞を受賞。2011年より現職

<クリエイティブに仕事する環境の整備が重要>

■わが国において、土木という仕事の社会的地位、学術的な重要性についてどのような考えをお持ちですか。

 関 海外に行くと実感しますが、土木技術者は、医師や弁護士と同等の、高度な専門知識を備えた職業として認知されています。一方、日本では土木設計やデザインといった仕事は、官業の補佐的な役割として位置付けられてきたこともあり、現在でもその地位は決して高いとはいえません。デザインや設計は本来、クリエイティブな仕事のはずなのに、クリエイティブに仕事をする環境が整っていないというのがこの国の土木を取り巻く現状であり、こうした環境を整えることが重要です。「少子化の影響もあり、学生を集めるのに苦労している」という国内の話は、海外の大学教授はにわかに信じてくれません。

■理工系学部を志す学生の近年の傾向について教えて下さい。

 関 残念ながら今の日本では、高校生の段階で「土木の何たるか」に触れる機会はほとんどないといっていいでしょう。面接が課せられる推薦入試は別ですが、一般入試で受験する学生の中には、「この大学に入って具体的にどのようなことを学びたいのか」が明確になっていない人もいます。今はまだ、私立の伝統校であるということで一定の志願者がいますが、いつまでもそうした伝統にあぐらをかいてはいられないという危機感も募らせています。

<必要なのは「ジャッジできる判断力」原点回帰で基礎力増強>

■国内と諸外国では土木に対する認識の違いも大きいというわけですね。

 関 欧州などでは人々の生活に密着したところに土木があります。例えば地下鉄の駅や道路など、至る所で土木に関連するポスターを目にすることができます。社会生活と密接に関連する、とてもやりがいのある「格好いい仕事だ」という共通認識ができあがっている点は大きいと感じます。

■わが国では今後、建設業を支える技術者を確保・育成していくことはますます難しくなりそうです。課題の解決に向けた糸口はどこにあると考えていますか。

 関 明治以来、官公庁主導で成り立ってきたこの分野の産業システムを変換しつつ、技術の空洞化に対応することが必要です。そして、エンジニアに求められる最も重要な要素である「ジャッジできる判断力」を養うことです。そのために本学では、原点回帰の意味からも「基礎力の増強」に取り組んでいます。土木工学の根本ともいうべき土と水と構造の力学をしっかりと頭に叩き込み、「自らが判断し、行動できるエンジニア」を育てるため、海外のコンペに参加したり、アジア諸国の学生との交流も積極的に行っています。そうしたことを通じ、土木が人々の生活に欠くことのできない、「誇りを持てる技術だ」ということを示すことができれば、また、わが国の土木技術の高さにしっかりと光が当たりさえすれば、土木を志す若者は増えてくるのではないか、そんな期待も持っています。


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